脳卒中(くも膜下出血)
国試のために覚えたい最低限の知識です。
医学生以外の方でこの病気が気になる方でも気軽に見ていただけるかと思います。
脳血管障害はざっくり分けて
③その他…脳動静脈奇形、もやもや病 など
に分けられます。
このうち、非常に緊急なものが
の3つで、この3つを合わせて「脳卒中」と言います。
特に脳卒中の中でも、
・GCS 8点以下
・GCSが2点以上下がる
・瞳孔不同(左右で瞳孔の状態が異なる)
・Cushing現象(高血圧、徐脈)
といった所見が見られると緊急度は高くなります。
この記事ではくも膜下出血のみ詳しく取り上げています。
1.くも膜下出血
脳動脈瘤の破裂が原因として最多です。
脳動脈瘤の破裂
→くも膜下(つまり脳の外側)に出血
→頭蓋内圧が亢進、脳虚血
→脳ヘルニア、急性水頭症(髄液循環の低下)、神経原性肺水腫など
という流れになります。
頭蓋骨には限りがあるので、脳の外側に血液が溜まっていくと頭蓋骨の中の圧が上がってしまい、症状が出てくるということですね。
くも膜下には本来髄液という血液とはまた別の液体が流れているのですが、ここに血液が溜まってしまうため、本来流れているはずの髄液は流れれなくなってしまいます。それにより脳に浮腫が生じ、急性水頭症などが現れます。
[合併症]
急性期(特に24時間以内):動脈瘤の再破裂
→一度は凝固機能により出血は収まるのですが、脳が虚血になっていると代償的に高血圧になるため、その高血圧に負けてふたたび瘤が破裂します。
亜急性期(72時間〜2週間):脳血管攣縮
→出血した血液成分によるもの
慢性期(数週間〜数ヶ月):正常圧水頭症
→くも膜下腔の髄液循環不全によるもの
合併症は国試でたびたび見かけますね。
[症状]
・突然の激しい頭痛
・悪心、嘔吐
・意識障害、けいれん
・動眼神経麻痺、髄膜刺激症状
脳出血や脳梗塞が脳実質を犯すのに対し、くも膜下出血はあくまでクモ膜下腔への出血なので、局所神経症状はあまり見られないのが特徴ですね。
国試ではこの辺りの疾患の問題には必ず「突然の」という言葉が見られますが、突然の頭痛なのに局所神経症状が見られなければくも膜下出血を疑いましょう。
[検査]
CT:鞍上部周囲にヒトデ型の高吸収域
脳溝に高吸収域が見られる写真が出てきたらくも膜下出血です。くも膜下出血が脳内へ伝播することもあります。
[治療]
急性期
…厳格な血圧管理(降圧薬、鎮痛、鎮静)、グリセロール、ジアゼパム
→再出血をとにかく防ぎます。血圧を下げ、脳の浮腫を抑えるためにグリセロール、抗けいれん薬としてジアゼパム
適応があり、かつ72時間以内で血管攣縮が起きていなければ、外科的にクリッピング術やコイル塞栓術を行うことがあります。
亜急性期、慢性期
→各合併症の予防やそれに対する予防を行います。
[国試]
103G59-61 3連問
「62歳の女性.言動の変化を心配した家族に伴われて来院した. 現病歴:1週前に突然頭痛が出現し持続したため,自宅で休んでいた.今朝からぼんやりして話 のつじつまが合わないことに家族が気付いた.
既往歴:30歳代から高血圧症で,降圧薬を服用中である. 家族歴:特記すべきことはない.
現 症:開眼しているが,名前と生年月日とが言えない.身長153cm,体重50kg.体温37.4℃. 脈拍72/分,整.血圧148/88mmHg.運動麻痺と感覚障害とを認めない.右眼瞼の挙上は不能 である.右瞳孔は散大し,対光反射は消失し,正面視で右眼球は外転位である. 検査所見:尿所見:蛋白(-),糖(-).血液所見:赤血球290万,Hb 9.2g/dL,Ht 26%, 白血球7,400,血小板17万.血液生化学所見:血糖101mg/dL,総蛋白6.1g/dL,アルブミン 3.3g/dL,尿素窒素11mg/dL,クレアチニン0.5mg/dL,AST 13IU/L,ALT 10IU/L,LD 184IU/L(基準176~353),Na 143mEq/L,K 3.3mEq/L,Cl 102mEq/L.CRP 3.0mg/dL」
→本問も「突然の頭痛」で発症した問題です。「高血圧」もキーワードですね。「運動麻痺と感覚障害とを認めない.」片麻痺や感覚症状は脳出血や脳梗塞で見られやすい症状です。
各小問を見ていきましょう。
「59障害されているのはどれか.
a 視神経 b 動眼神経 c 滑車神経 d 外転神経 e 迷走神経」
→問題内「右眼瞼の挙上は不能 である.右瞳孔は散大し,対光反射は消失し,正面視で右眼球は外転位である.」という文章からいずれも動眼神経麻痺が考えられる所見です。
答、b
60この患者の意識レベルはJCSでどれか.
a Ⅰ-3 b Ⅱ-10 c Ⅱ-30 d Ⅲ-100 e Ⅲ-300
→問題内「開眼しているが,名前と生年月日とが言えない.」
開眼していれば一桁なので、その時点で解答はaに絞れるのですが、名前と生年月日が言えていないため、Ⅰ-3となります。
ちなみに、開眼しているが意識清明ではなくボーッとしていればⅠ-1、開眼していて見当識障害(場所、時、人が言えない)があればⅠ-2です。
答、a
61入院後徐々に意識が低下し左片麻痺が出現した. 考えられるのはどれか.2つ選べ.
a 小脳出血 b 脳ヘルニア c 出血性脳梗塞 d 脳血管攣縮 e 細菌性髄膜炎
→前述の通り、くも膜下出血の合併症を選びましょう。
答、b,d
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